東南アジアには、ASEAN(Association of South-East Asia Nations:東南アジア諸国連合)である10ヵ国に、東ティモールを加えた11ヵ国が含まれます。これらの地域は、比較的安価な労働力を提供する生産拠点として捉えられる機会が多かったですが、6億人を超える巨大な人口を背景とした消費大国として、市場拡大が見込まれているのです。
実際に、東南アジアに進出を検討されている方もいるでしょう。進出する際は、各国の特徴を把握しておくことが大切です。この記事では、東南アジアの海外進出状況と国別の進出メリット・デメリットについて解説します。
東南アジアの海外進出状況
まず、東南アジアの海外進出状況について解説します。外務省の「海外進出日系企業実態調査(平成30年要約)」によると、東南アジアに進出している法人数は下記の通りです。
多くの企業が、東南アジアに進出していますが、国別の進出するメリット・デメリットについて確認していきましょう。
東南アジア海外進出:シンガポール
シンガポールは、交通・物流インフラが整備されており、事業環境の指標であるDoing Businessでも10年連続で1位にランキングされており、まさにASEANの首都的存在として知られています。ここでは、そのようなシンガポールへ進出するメリット・デメリットについて解説します。
シンガポールへ進出するメリット
インフラが整えられている
シンガポールは貿易船の拠点として発展しており、物流の利便性が高く評価されています。世界有数のコンテナ取扱量を誇る港湾施設の設備など「陸送・海運・空輸」などのインフラが整っているため、グローバル統括拠点としてシンガポールを活用する企業は、7,000社を超えています。
・優遇制度が受けられる
シンガポールは、法人税制度を始めとする優遇制度が設けられています。法人税制度ならば、シンガポールの法人税=企業所得税となり、所得とみなされたもの以外には課税されない仕組みとなっています。また、その法人税率も最高17%となっているため、ビジネスがしやすい国としても高い評判を集めているのです。
シンガポールへ進出するデメリット
・物価が高い
シンガポールは物価が高いです。食費や衣料費などは日本と比較しても高くは感じないかもしれませんが、住宅や自動車は高いです。シンガポールの不動産価値は上昇しているため、シンガポールでオフィスを設けるためには、高い賃料を覚悟しなければいけません。
・就労ビザが取得しづらい
日本企業としてシンガポールに進出するためには、就労ビザが必要です。就労ビザの取得の審査基準は厳しくなってきており、エンプロイメイントパスを取得するには、学歴・スキル・売上の各項目において厳格な基準が設けられています。
・国土面積が小さい
シンガポールの国土面積は、東京23区とほぼ同じです。埋め立て地などで広くなっているものの、小さな都市国家であることは限りありません。また、シンガポールの人口は約554万人です。そのため、市場規模は決して大きいとは言えません。
シンガポール進出企業の成功事例
リーズナブルでおいしいスイールが存在しないシンガポールに破格スイーツとして進出したのが「シャトレーゼ」です。
シンガポールのパティスリーでは、ショートケーキ1つが10ドル(約800円)なのに対し、シャトレーゼのショートケーキは3ドル(約240円)となっています。また、ロールケーキや大福などのお手頃価格のスイーツを展開して、多くの人に愛される店舗として成功。現在は、国内に複数の店舗を展開しています。
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東南アジア海外進出:タイ
タイは首都バンコク近郊に工業団地を有しており、物流インフラも整っているため、機械産業の東南アジア進出の有料な候補地です。また、首都バンコクには、1,500万人の人口が集中しており、消費市場としても魅力的です。ここでは、タイに進出するメリット・デメリットについて解説します。
タイへ進出するメリット
・アジアマーケットのハブ機能の役割を持つ
タイは、アジア周辺国に向けたハブ機能の役割を持っています。東南アジア諸国の中心に位置しており、東南アジア南部の陸路をつなぐ「南部経済回路」が整備されました。それにより、タイを中心に物流環境が改善されてきています。
・日本製品が売りやすい
タイでは、日本製品や日本食への需要が拡大し続けています。タイは観光地であり、多くの日本人が訪れます。そのため、現地には多くの日本食レストランや医療サービスなどが展開されています。
健康ブームが高まるタイでは、日本食が人気を集めており、日本に興味関心を持つ人々が増えてきています。また、中間所得層が増えてきているため、日本製品が売りやすいです。
・安価な事業コスト
タイの人件費は、日本の1/4のコストです。大学進学率は40%を超えているため、安価で勤勉な労働力を活用した事業展開が可能です。オフィスのレンタル料も1/4程度なので、安価な事業コストで高付加価値なビジネス展開をすることができます。
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タイへ進出するデメリット
・少子高齢化社会
タイは、日本と同様の少子高齢化社会で、消費マーケットの縮小が避けられません。女性が子供を産む指標となる出生率も低下しているため、長期的に見るとマーケットは縮小していくこととなります。
・不安定な政治事情
タイは、経済が政治に左右されがちです。軍事政権から立憲君主制に移行したタイですが、軍事クーデターが度々起こりました。また、反政府軍のクーデターにより、治安が悪化することもあります。現地進出する日本企業にとっては、やはり治安悪化は大きな問題となるでしょう。
・所得の地域差
著しい経済成長を遂げたタイですが、経済成長はバンコク近郊のみとなっています。そのため、地方の人々は経済成長の恩恵が得られているわけではないのです。地方の人は平均所得も低く、日本の商品を購入できないという所得の地域差の問題もあります。
タイ進出企業の成功事例
株式会社フォーサイトは、タイの教育が行き届いていないところに注目をして、累計800人以上の子どもが学習できる場の提供をしています。安価で質の高い教育を広く届けるというミッション実現のため、海外教育を実施。オンライン学習に特化したサービスを提供して、売上を伸ばしています。
東南アジア海外進出:マレーシア
マレーシアは、安定的な経済発展を続けています。国民一人当たりのGDPはタイの約2倍です。ここでは、そのような魅力が溢れるマレーシアに進出するメリット・デメリットについて解説します。
マレーシアへ進出するメリット
・親日国である
1981年当時の旧マハティール政権によって提唱されたルックイースト政策は、日本の集団主義や勤労倫理を学び、自国のビジネスに取り組もうというものでした。
ASEANの中でもリータシップが取れるような国に急成長したのは、この政策のおかげです。そのため、マレーシアは日本への理解が深い新日国となっており、事業展開がしやすいです。
・積極的な外資企業の誘致
マレーシアは外資企業に対する規定がなく、積極的に外資企業を誘致しています。2009年以降にはサービス産業の自由化も発表し、それまでの外資企業の資本規制を緩和しました。そのため、海外進出しやすい国となっています。
・マーケット市場の拡大
マレーシアは出生率も高いため、2015年に約3,000万人の人口が、2025年には3,500万人に突破すると予測されています。また、GDPも高水準で成長しているため、マーケット市場の拡大が魅力となっている国です。
マレーシアへ進出するデメリット
・ブミプトラ政策によるマレー系優遇政策
マレーシアは、中国系人とマレー人の対立は、経済的格差が原因で絶えませんでした。この対立を避けるために、マレー人を優遇するブミプトラ制作が策定されました。この政策は、2009年に見直されましたが、マレー人を優遇するような政治的な力学も存在します。
・多様な人種の中のショブポッピング
マレーシアでビジネスを行うにあたって、リスクの1つとしてあげられるのが、ジョブポッピング(転職を繰り返す行為)です。人種が異なれば、文化や習慣も異なるので、それぞれの違いを理解したジョブポッピングへの対応が求められます。
マレーシア進出企業の成功事例
マレーシアのプロモーション会社として成功をしているのが、「JMK Consulting」です。代表が、日本人とマレーシア人のハーフというというバッググラウンドを持っており、独自のインフルエンサーネットワークを駆使したインフルエンサーマーケティング「BRIDGE STORYZ」で成功を収めています。
マレーシアでは、日本以上にSNSを活用する時間が長いという特徴を活かした成功事例です。
東南アジア海外進出:インドネシア
インドネシアは、2億5,000億人の巨大人口が魅力となっています。また、若年人口の比率が高いため、今後も順調な経済発展が期待できる国です。ここでは、そのような魅力溢れるインドネシアに進出するメリット・デメリットについて解説します。
インドネシアへ進出するメリット
・マーケット市場の拡大
インドネシアは、中間所得層が10年間で12倍に増えており、消費規模が拡大しています。国内総生産(GDPの5割強が個人消費で占めているので、その個人消費が経済成長を後押ししています。
・親日国家である
独立を果たしたインドネシアにオランダが侵攻してきたとき、インドネシアの独立に尽力してきたのが日本です。そのため、多くの人が日本に対して友好的です。日本への理解があることは、進出する際の最大のメリットです。
・豊富な資源国家
インドネシアの国土は広大であり、農林水産物を筆頭に、天然ガスや石炭など豊富な天然資源があります。これらを活用したエネルギー生産拠点としての活用も期待できるでしょう。
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インドネシアへ進出するデメリット
・未整備なインフラ
交通インフラの状況は、首都ジャカルタに人口が集中しているため、近辺での渋滞は酷いです。主要都市間で高速道路も開通していますが、舗装率は十分とは言えない状況です。
・規制や法律が厳しい
インドネシアでは、業種分野によって外資企業が参入することはできません。例えば、運送会社は、内資100%と現地民間企業に限られている業種のため、日本企業は会社を興すことはできません。そのため、法人設立が可能かどうかを良く確認しましょう。
インドネシア進出企業の成功事例
インドネシアで繁盛しているのが、からあげ専門店「ZAN-GI」です。インドネシアは新日国であるため、日本の食文化に興味を持っている人が多いです。また、インドネシアでは、アヤムゴレンと呼ばれる鶏肉を揚げた料理があり、その競合商品として唐揚げを販売し出しました。このようにローカルに合わせた手法が成功した要因です。
東南アジア海外進出:ベトナム
ベトナムは、日本と共通する文化を有しており「勤勉」「器用」「チームワーク」といった日本と共通の特徴・価値観を有していると言われています。その上、労働コストが安いため、中国からの生産拠点移転先として注目を集めています。ここでは、そのような魅力溢れるベトナムに進出するメリット・デメリットについて解説します。
ベトナムへ進出するメリット
・質の高い人材が豊富
ベトナムの人口は、約9,720万人で平均年齢は28歳。今後も、人口増加は続き、1億人を突破するとも言われています。その中でも特筆すべきなことは勤勉な国民性です。また、ITリテラシーも高く、質の高い仕事が期待できます。そのため、質の高い人材採用先として人気です。
・物価が安い
近年、物価は上昇傾向にあると言われていますが、それでも日本の物価の1/3程度です。また、賃金も安いため、低コストで人材を採用することができます。そのため、人材費が主要なコストとなるITオフショア開発事業などで進出している企業が多いです。
・豊富で魅力的な国の政策
2007年にWTO加盟を果たし、貿易の自由化も進められています。それに伴い、近年貸出金利が引き下げられたり、税制優遇措置も実施されたりしました。また、政府が定めた分野以外には、外資100%進出も認められていて、積極的に外資企業を呼び込む体制ができていることがメリットとなっています。
ベトナムへ進出するデメリット
・インフラ整備が整っていない
ベトナムは農業国家であるため、他国と比較するとインフラ整備が整っていません。バイク普及率が高いベトナムですが、道路の不整備から渋滞や事故に巻き込まれることも少なくありません。
・安定しない政策
ベトナムでは、中央政府で決定されたことが現場まで届くまで時間がかかります。また、政策が都度変化したり、不確実な情報に振り回されてしまうことも多々あるので注意しなければいけません。制作は安定しないため、柔軟に対応しなければいけません。
ベトナム進出企業の成功事例
ベトナムで美容院を開業したのが、 DECORA totalbeautysalonです。ベトナムの方々に日本のサービスや技術を提供していく傍ら、世界的に輝ける美容師を輩出できるような美容学校を作りたいと開業をしました。ベトナム人は働き者で、手先も器用なので教えがいがあり、業績が順調に拡大している美容院です。
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Shopeeとは?アジア進出に活躍
ショッピーは、ここ数年で一気に存在感を高めたシンガポール発のECサイトです。
アプリのダウンロード総数は1億を超え、東南アジアにおけるアプリダウンロードランキングで1位に輝くという人気ぶりです。2015年の創設以来エリアを広げ、現在では東南アジアに位置するタイやベトナムなどに加え、台湾、ブラジルなど8つの国やエリアで展開されています。
shopeeについてはこちらの記事で詳しく紹介しておりますので、ぜひご覧ください。Shopeeとは?アジア進出に活躍
まとめ
今回は、東南アジア諸国の国別の進出するメリット・デメリットについて解説しました。東南アジアであれば、日本との距離も近いため、時差を気にすることなく取引ができます。また、親日国も多いため取引しやすいでしょう。
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