世界中でステイホームが余儀なくされた2020年3月以降、SNSはこれまで以上に人々を繋げる重要なツールとなった。2019年の海外SNS動向と今後のトレンドについて、各地域の特徴をまとめた。
1.海外SNS:中国の特徴
11億人が使っているという中国最大のSNSツール「WeChat」は、中国のSNSにおいて圧倒的な地位を築いていることは間違いない。しかしながら、中国のSNS事情は多様性にあふれ、人々は用途ごとに最適なサービスをうまく使い分ける傾向にある。 WeChatは、日々の連絡手段として欠かせないツールだが、幅広く情報発信やメッセージの共有をする際のSNSツールとして、QQやWeiboが使われる。ショートビデオプラットフォームのTikTokはもちろんのこと、オンライン動画サイトのBilibili、写真加工アプリのMeitu、フード系アプリのMeituan-Dianping、マッチングアプリのMomoなど、いずれも中国市場を知る上で無視できない、存在感の高いSNSサービスである。このように、中国で多様なサービスが受け入れられる理由の一つとして、中国人ユーザーが比較的飽きやすく、常に新しいサービスを探している、という特徴があげられる。そのため、企業はサービスやアプリが軌道に乗っても、次々と新しい機能を追加していくことに余念がない。また、中国人は、良いと思ったものに対して、素早いアクションを起こす傾向にあるため、企業側はユーザーの反応を図りやすい。
2.海外SNS:東南アジアの特徴
近年、中流階級層が急増し、IT市場を取り巻く環境も活発化してきた東南アジア。若年層が多く、インターネットユーザーの9割強がSNSを利用している。シンガポールやフィリピンのように、英語が幅広く使われている国では、多文化に関する情報へアクセスにSNSが重要な役割をはたしている。一方で、タイやマレーシアは、独自の文化が重んじられ、ローカライズされたサービスやコミュニティが好まれる傾向にある。
- シンガポール:Facebookなどの動画エンゲージメントが他国よりも高い。多文化に関する情報への関心が高い。
- インドネシア:多数の島でなりたつため、SNSは繋がるために重要な役割を持つ。K-Popなどエンタメへの関心が高く、ゲーム関連のコミュニティも大きい傾向。
- タイ:国産コンテンツが主流。ローカライズされているサービスを好む傾向。
- マレーシア:伝統や文化的背景を尊重しながら、SNSで新しい試みや発信活動を活用する例が多く見られる。政治関連のトピックに反応も高い。
- フィリピン:動画視聴やゲームへの関心が高い。人同士の繋がりを重んじる文化背景があり、SNSの利用時間は高い傾向。
- ベトナム:独自のチャット系アプリZaloの存在が特徴的。スポーツや韓流文化への関心が高い。
3.海外SNS:台湾
日本以外で、LINEが幅広く普及している唯一の国が台湾である。絵文字やスタンプを好む点で、日本と同様の特徴がある。Facebookが圧倒的地位を確立し、9割以上のインターネットユーザーが利用している。一方で、TwitterやInstagramの利用率は比較的低く、ほとんどの情報発信をFacebookに集約して行っているユーザーが多いことが予想される。なお、利用頻度においては、30歳以下の若年層は、上の層に比べて低い傾向にある。背景には、プライベートを広範囲に公開することに抵抗がある若者が増えているといわれている。そのため、若年層は、親しい仲間でクローズドのコミュニティをつくり、限定的な発信・共有を好む傾向にある。中国本土で使われるWeChatやWeiboの利用率は高くない。
4.海外SNS:韓国
世界トップクラスの高速インターネット回線をもつ韓国は、アメリカとならび、5Gサービスをいち早く導入した国でもある。そのため、50代以上のシニア層にもインターネットやスマホの高い普及率がみられるのが特徴。若者は、FacebookやInstagram, Twitterなどのグローバルなサービスの利用率が高く、40代以降には、Naver社の運営するBANDなどのコミュニティツールのユーザーが多い。そのため、Naver社は、あらゆる策で若年層の取り込みを試み、若者向けのプロモーションに注力している。唯一韓国のみで普及しているメッセンジャーアプリのKakao Talkは、すべての世代に幅広く使われている。
5.海外SNS:アメリカ
アメリカのSNSは、Facebook、Instagram、Twitterの3強で大部分を占めていたが、若者を中心にSNS疲れがみられ始めている。これらのユーザーがSnapChatやTikTokなど、よりライトに楽しめるサービスにシフトしている傾向。全体のSNSユーザーにおいては、今後3年は増え続けると予測されている。 また、政治的活用が活発なことも、言論の自由が重んじられるアメリカならではのSNSの特徴。トランプ大統領のSNS上の発言が度々報道されるように、SNSは、政治的・社会的意見や情報発信において、大きな影響を与えるツールとなっている。それだけに、意図的に誤情報を発信するフェイクニュースの問題や、倫理上問題のある発言の拡散が錯乱し、運営側は規制の整理が追いついていないなどの課題もある。
参照
https://www.statista.com/ https://hootsuite.com/
6.海外SNS:インド
社交的な国民性をもつインドは、2020年時点のFacebookユーザー数が世界一多い国となった。また、2019年にWhatsAppとTikTokにおいて、世界でもっともダウンロードされた国になった。スマホアプリの利用率は総じて高く、過去3年でダウンロードされたアプリの数は、200%近く増加している。 SNSのユーザーは若年層が多く、73%が18歳から24歳のユーザーとなっている。一方で、都市部から離れた地方でのスマホ普及率が急速に広がり、英語の他に、ヒンディー語を主な公用語として使う地域でのSNS利用が急増している。そのため、ローカライズされたコンテンツへの需要も増え、インド人ユーザーに特化したローカルサービスも増えてきている。
参照
https://www.statista.com/topics/5113/social-media-usage-in-india/ https://sannams4.com/digital-and-social-media-landscape-in-india/
7.海外SNS:ヨーロッパ
Facebookがヨーロッパ諸国に共通してもっとも使われているSNSツールとなっている。地域別にみると、特に北欧の利用率が高く、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランドが2019年のランキング上位にみられた。一方で、先進国であるドイツ、フランスでは、SNS利用率が比較的低い傾向にある。ドイツは、日本と同様に国民の平均年齢が高いため、全体のインターネットユーザーに対してSNS利用者が少ない。フランスでは、プライバシー保護の観点で、SNSの規制が他国より厳しく国民の意識も高い。LinkedInなどのビジネス利用や目的が明確な利用に制限するなど、SNSに対して慎重に向き合う傾向にある。また、身心の健康上、SNSやスマホに使う時間を減らす”デジタル・ウェルビーイング”も注目が高い。こうした背景から、大手企業がSNSの公式アカウント運用を止めたり、著名人がアカウント削除をしたりなどの動きもみられる。
8.海外SNS:オーストラリア
2019年にTikTokのユーザーが大幅に急上昇したのがオーストラリア。特に、初めてSNSに触れる層(2006年以降生まれ)の間で大ブームになっている。この層では、特に女性ユーザーによるエンゲージメントが高く、多くの企業やブランドがコラボレーションをするなど、広告収入にもおいても大きな市場になっている。一方で、デジタル市場を取り巻くさまざまな社会問題がオーストラリアのユーザーの大きな懸念になっている。個人情報流出問題や環境問題など社会的不安要素がフェイクニュースの拡散などに繋がり、メディアに対する不信感から、二人に一人のユーザーが広告の拒否設定やクッキー削除の徹底などの対応をしている。 https://wearesocial.com/au/blog/2020/02/digital-2020-in-australia-analysis
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しかし海外と日本では、同じSNSでも利用のされ方が異なる場合があるので、日本と同じ方法でSNSマーケティングで成果が出るとは限りません。
海外SNS運用をする際に知っておくべき海外企業のSNSマーケティング事例
本記事では、海外でのSNSマーケティングを成功させるために、海外企業が行った実際の施策、運用方法を紹介しています。海外進出をお考えの方はぜひご覧ください。
まとめ
海外SNSの最新トレンドは、その国ごとの特徴があるものの、多くの共通点がみられている。Facebookが全世界的に、依然として強力なツールであると同時に、ミレニアム世代やZ世代など、若年層には、InstagramやTikTok、SnapChatが好まれる傾向がある。ユーザーは、プライバシーやデータの取扱いにセンシティブになり、ユーザー主導の自由なコミュニケーションの中にも、倫理的環境の整備を求めるようになった。世界中がひとつのサービス上で繋がれば繋がるほど、個々のユーザーを満たすことは難しく、ゆえに離脱者も多くなっていく。しかしながら、もはやインターネットなしで人々は繋がることができない。ユーザーは、もっとも心地よいコミュニティを提供するサービスを選び、そこに留まることになるだろう。
参照
https://www.minterdial.com/2019/04/quitting-social-media-brands/ https://cleareurope.eu/8-social-media-trends-to-watch-in-2019/ https://www.statista.com/statistics/276767/social-network-usage-penetration-of-european-populations/
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