2020年9月1日

【2020年度版】中国の越境EC市場の実態と動向

ニュースやメディアなどで越境ECという言葉をよく見かけるようになりましたが、いざ始めるとなると越境ECの実態について意外と知らない事実が多くあるかもしれません。

つい最近では、メルカリが台湾で越境ECをスタートするために東南アジア・台湾で最大規模のマーケットプレイス「Shopee(ショッピー)」と連携するニュースが話題になりました。

https://www.advertimes.com/20200817/article321289/

いまだに熱い注目を集める越境ECですが、今回は、越境ECの基本的な情報から今後の動向について紹介したいと思います。

越境ECとは

まずは越境ECについて説明します。越境ECと聞くと「中国で商品を売る」というイメージが強いですが、自社商品を海外のECプラットフォーム、および自社サイトに掲載し、その商品を海外消費者が購入すると、それは越境ECといえます。

つまり国境を超え、自社の商品を海外消費者向けにオンラインで販売・配送することが越境ECのおもな意味合いです。

越境ECの市場規模と将来性

では、実際に越境ECにはどれくらいの市場規模や将来性があるのでしょうか。

越境ECの市場規模について

経済産業省が発表した「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」では、日本・米国・中国の3か国間においていずれの国の間での市場規模が増加していると発表しました。

なかでも、中国消費者による日本事業者からのECでの購入額は、1兆6,558億円(前年比7.9%増)と増加傾向にあります。

また以下のグラフで国別でみても、中国がダントツでEC市場規模が大きく2位の米国について3倍の開きがあります。中国でどれだけECが頻繁に使われているかを示しています。

引用:令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

また、世界の越境EC市場規模は今後拡大すると予測されています。現在の市場規模はおおよそ9123億USドルと計算されていますが、それが2027年までには4兆8561億ドルにまで拡大すると予測されています。

引用:令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

「越境ECの参入に遅れてしまったかもしれない」と思っていた方でも、このグラフを見ればわかるように、越境市場は今後もますます拡大していくことでしょう。

その背景には、すでに多くの国民がECを利用するためのスマートフォンやタブレットを保有してる点や、決済機能が多様化し、より多くの人にとってECが使いやすくなっている点が挙げられます。

さらに、越境ECで購入できる事業者の増加も拡大に拍車をかけている理由とみてよいでしょう。今後もこの流れは続くことが見込まれ、市場は益々拡大すると期待されています。

中国越境ECの動向について

この章では、市場規模の大きい中国の越境ECの動向について触れていきたいと思います。
2020年時点の中国では、BtoCのEC市場規模が1.52兆USドル、またEC化率は44%となっていますが、2023年には4.10兆USドル、EC化率は63.9%にまで拡大すると見込まれています。

引用:令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

———–
EC化率とは・・・EC化率とは、経済産業省の定義によれば、すべての商取引金額(商取引市場規模)に対するEC市場規模の割合。
———–

多くの事業者が販売する場所をオンラインへと移行するにつれて、ECの市場規模が拡大していきます。それに伴い、中国での越境ECのポテンシャルも今後拡大傾向にあります。

またこの拡大予想の理由の一つに、中国農村部でのEC利用が本格化されると見込まれており、これらの動きが中国のEC市場を後押ししていると考えられています。

中国越境ECのユーザーについて

では中国の越境ECユーザーはどのような商品を購入しているのでしょうか。同調査によれば中国のユーザーが一番多く購入している商品は「化粧品・美容関連製品」でした。

それについで、「トレイタリー」「健康商品」「食料、飲料」「家電」「衣料・バッグ」「ベビー用品」「家庭用品」「スポーツアウトドア用品」が主に購入されている商品でした。

引用:令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

またユーザーは商品の品質、多様な種類を求めている傾向にあり、そのほかにもアフターサービスの改善、商品の品質改善なども越境EC事業者に改善を望んでいることが明らかになりました。

これから越境ECに取り組む際には、その国の越境ECユーザーがどのようなことを求めているのかを明確に把握し、対策していく必要があります。

今参入すべき3つの理由

越境ECになぜ参入するべきか、疑問に思われている方も中にはいらっしゃるかもしれません。日本国内にもECは浸透していて、わざわざハードルの高いと思われる海外で展開する必要はあるのでしょうか。

日本国内市場の変化

ここ数年、多くのメディアで報道されているのでご存知かとは思いますが、今後日本は少子高齢化社会になっていくと考えられています。それに伴い消費する人口が減少し、購買層の変化を引き起こすと考えられています。

特に、購買意欲の高い若年層の比率がどんどん縮小していくことも考えられており、日本だけでなく、グローバルで商品を展開する必要性を多くの企業が痛感しています。

流通とシステムの進歩・改善

先述したように、ECサイトや決済手段の改善改良が進んでおり、テクノロジーの進歩のおかげで多くの方にとってECは身近なものになりました。 またアジア圏の経済成長やIT設備、インフラの充実による物流の改善もあり、ECを利用しやすい環境がますます整っています。これらの事実がよりEC利用の拡大を後押ししています。

中国越境ECの主要なプラットフォームについて

中国の2大越境プラットフォームの特徴

今回は中国でもっとも使われている越境ECのプラットフォームの特徴を紹介します。日本企業が中国で越境ECを実施する場合、中国国内で使われているプラットフォームを利用します。

中国では「天猫国際」と「京東国際」という2つのサービスが主に中国国内で利用されています。

天猫国際はアリババグループが運営する中国国内で最大規模の越境ECプラットフォームです。一方、京東国際は中国EC大手「京東(JD.com)」が提供する天猫国際の次に規模の大きい越境ECプラットフォームです。

これまでは「Koala」というプラットフォームが市場シェア1位を獲得していましたが、赤字を抱えていた「Koala」は2019年9月にアリババグループに買収され、天猫国際と事業統合した結果、5割以上のシェアを手に入れることになりました。そのほかの主要プラットフォームは唯品国際、小紅書などが挙げられます。

英語圏や東南アジアで使えるECプラットフォーム

おもに中国のECサイトを紹介してきましたが、他の英語圏の国やその他アジア地域に進出する際は、どのようなプラットフォームを利用することができるのでしょうか。

それぞれの国の主に使われているECプラットフォームを簡単に紹介します。

【アメリカの主要ECプラットフォーム】
-Amazon
-Walmart
-eBay

【韓国の主要ECプラットフォーム】
-G-Market
-11番街
-Tmon

【台湾の主要ECプラットフォーム】
-Yahoo!奇摩購物中心
-PCHome
-博客来

【タイの主要ECプラットフォーム】
-Lazada
-Shopee
-AIIiExpress

【ベトナムの主要ECプラットフォーム】
-Lazada
-Shopee
-Tiki.vn

【シンガポールの主要ECプラットフォーム】
-Lazada
-Qoo 10 Singapoor
-Shopee

【フィリピンの主要ECプラットフォーム】
-Lazada
-Shopee
-Zalora

【マレーシアの主要ECプラットフォーム】
-Lazada
-Shopee
Taobao

【インドネシアの主要ECプラットフォーム】
-Tokopedia
-Shopee
-Bukalapak

なかでも注目したいのが、東南アジア各国ではLazadaとShopeeという2つの巨大ECプラットフォームが利用されている点です。

中国の巨大ECが東南アジアにグローバルに展開していると思えば、意外とそうではなく、また日本でおなじみのアマゾンも東南アジアで使っている方はほとんどいません。
英語圏の国や上記の東南アジア各国に進出したいと考えている方は、ぜひ一度現地で使われているECサイトを検索してみてください。

越境ECを取り組む際の課題と対策すべきポイントについて

言語について

よくありがちなパターンとしては、日本語をそのままgoogle翻訳で英語や中国語、その他の言葉に翻訳する方法ですが、こちらはおすすめできません。

海外の方にしっかり商品を理解してもらうには、現地の言葉がわかる方に商品説明などを作ってもらう必要があります。

その他にも問い合わせ対応なども現地の方に対応してもらう必要はあるので、その分の人件費も考慮する必要があります。

関税・国際輸送について事前調査

国ごとに輸入できる商品に規制があったり、商品ごとに異なる関税手続きが発生することがあります。また場合によっては海外へ送れない商品もあります。

事前に海外輸入に関する各国の法律や規制を入念に調べてから、海外で展開する商品を選んでいきましょう。

為替リスクに関して

海外で売上があがったとしても、為替相場によって、価格が変動することがあります。為替変動によって越境ECの売上に影響を及ぼすケースはよくあります。

商品の金額を日本円で表記するなどして、為替リスクを対策する必要があります。はじめから日本円で表記しておけば、他国の通貨の価値が変われど商品の値段は変わることはないので、この為替リスクの事情も考慮していく必要があります。

決済手段の違いに関して

日本では多様な決済手段があり、クレジットカード以外にもコンビニ決済やスマホ決済など、あらゆる手段で支払いすることができますが、これは国が変われば使うアプリや決済手段が大きく変わってきます。

各国でどの決済手段が主流なのか、事前に調査してから決済手段についても準備し、越境ECの顧客体験を向上していく必要があります。

まとめ

越境ECは今後も拡大傾向にあり、まだまだ参入の余地が多くありますが、一方で、日本で事業を展開するよりも準備する内容や考えるべき項目が多くあります。

今回は中国をメインに紹介しましたが、その他の国を展開するときも、どの商品が一番売れていて、それを日本から海外へ展開することは可能かなど改めて規制やルールなどを調べた上で実施していくのがよいでしょう。

 

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