現在のアプリ業界を見ると海外市場に熱い視線が向けられている。海外進出が容易になってきたことも追い風になっているが実際はどうなのだろうか。そこで今回は海外でアプリをプロモーションしていく際に気をつけたいポイントを解説する。
海外市場に合わせてアプリ企画内容を検討する
日本にいると気づきにくいが、海外市場はいまだに伸びている。英語、スペイン語、フランス語などは言語ごとの商圏が存在し、一度その言語圏に流行ると同言語圏にいる他の国にも口コミで伝播しやすい。また、各国のメディアも同じ言語で伝えられるので、話題として取り上げやすく正のスパイラルを起こしやすい。
海外のどこかの国で流行したものが、同じ言語圏での国で流行し続けるため、結果的に長期にわたって利用されやすいという傾向がある。今後アプリ市場は海外が現在より伸びていくため、グローバルにおける日本の市場比率は今後相対的に小さくなることが考えられる。
モバイルの使用率
アプリをプロモーションする成否はスマートフォンなどのデバイスの普及率にも影響する。ここでは、現在のデバイスの所有状況を見ていく。
2019年世界モバイル利用動向調査のデータによると、日本のスマートフォンの普及率は74%。この数値は調査対象国である21か国の中で最下位である。
中国 96%
ノルウェー 94%
スペイン 94%
アイルランド 93%
インド 93%
イタリア 93%
ルクセンブルグ 93%
オランダ 93%
フィンランド 92%
スウェーデン 92%
韓国 92%
メキシコ 92%
アイルランド 91%
デンマーク 91%
オーストラリア 91%
トルコ 90%
ドイツ 89%
イギリス 88%
ブラジル 88%
アルゼンチン 86%
カナダ 83%
日本 74%
日本でも従来型の携帯電話に置き換わる形で徐々に増加はしているが、先進国にも後進国よりも遅れている状況には変わりはなく、海外のマーケットにも目を向けるのは自然とである。
海外で受け入れられやすいアプリの傾向を分析、施策を行う
海外で受け入れられるためには以下のようなポイントがある。
- 国のニーズ、商習慣に沿ったコンセプトの作成
- 文化的背景に基づいたネーミング
- 海外で受け入れられやすいキャラクターの設定(かわいいはそれほど海外では受け入れられない)
- 国ごとによる色彩の嗜好の変化の把握
- 定量的かつ定性的に行う競合調査
- 実際誰が利用しているのかを限りなく想像して企画作成
- 言語なしでも楽しむことができる設計か、徹底的に言語ローカライズをしたもの
- プレイをしていると感覚的にも気持ちが良くなる、病み付きになるような効果音やBGMがあるもの
- オフラインの状態でも楽しむことができるもの
- 容量が少ないもの
総じて五感で楽しむことができ、言語を必要としなくても成立するようなシンプルなゲームが好まれる傾向が見られる。このように、人気ジャンル・トレンドが国によって変化するため、日本コンテンツへの親和性が国によって変わることがあることを考慮する。
また、アプリの価格帯によって途上国・先進国に受け入れられるかどうかが変化することもあり、価格を戦略的に検討することも考えたい。
各国の傾向を把握する
海外市場といっても国によっても傾向が変化する。ここではアメリカ、韓国、台湾の3つを例に挙げ解説していく。
アメリカ
アメリカ市場は日本市場と比較して以下のような特徴が見られる。
- 少数の開発者で作られたインディーズゲームがランキングに多数入ることがある
- 市場規模が大きいため、世界中からデベロッパーが集まってくる
- 他民族国家なだけに、文化・宗教・価値観を超えたシンプルで直感的、非言語でデザインされた設計が流行りやすい
- 音にこだわっているか、もしくは全く無音のゲームがヒットしやすい
- インディーズゲームは非リワード広告である広告出稿が多い傾向にある
- 成功したアプリの約90%が動画リワードを導入
韓国
韓国市場は日本市場に傾向が近いが一番違うのは言語の壁であり、以下のような特徴がみられる。
- 韓国市場で受け入れられるためには韓国語にローカライズする必要がある
- 日本のインディーズゲームも多少は受け入れられている
- インストール課金型であるCPI広告でマネタイズを行う傾向がみられる
台湾
台湾では中国語の他、英語を利用する人も多い傾向があるため、台湾市場において英語のみでローカライズされたアプリでもヒットすることも多い。また、国産のモバイルメーカーであるhtcやAsusがあるせいか、androidの使用率が高い傾向にある。
- 台湾市場でのアプリは英語・中国語のいずれにも対応している
- 英語のみのアプリでも充分ヒットすることは可能
- androidのユーザーが多いためGoogle playが重視されやすい
- 世界中でヒットしたアプリが、少し時間を置いてから台湾市場で流行しやすい
言語ごとで利用者を検討する
国によって市場の傾向があることは前述させていただいたが、もう一つの考え方として、言語別にプロモーションを検討するということも考えられる。ここでは言語圏について解説していく。
アジアは英語圏に、中南米とヨーロッパはスペイン語圏に含まれる
言語別に考慮すると、新たなグルーピングができ以下のような傾向が見られやすい。
- 英語を公用語としているアメリカ・インド・マレーシアは人気のアプリが共通している
- スペイン・アルゼンチン・メキシコといったスペイン語圏も共通している
- 南米で唯一のブラジルはポルトガル語が公用語だが中南米の影響を受けやすい
- フランスはフランス語圏であるアフリカよりもヨーロッパに近い傾向がみられる
- 日本や韓国語は言語圏的に独立している
アジア圏では日本、韓国、中国を除くと英語圏に含まれやすく、中南米とヨーロッパではスペイン語圏が大きくなっている。
言語別のユーザー数を把握する
インターネットの主要言語は英語と中国語で約半数を占め、そのあとにスペイン語、アラビア語、マレーシア(インドネシア)語、ポルトガル語、フランス語、日本語と続いていく。具体的な比率は以下の通り。
英語 25.9%
中国語 19.4%
スペイン語 7.9%
アラビア語 5.2%
マレーシア(インドネシア)語 4.3%
ポルトガル語 3.7%
フランス語 3.3%
日本語 2.6%
ロシア語 2.5%
ドイツ語 2.0%
近年、顕著な伸びをみせているのがアラビア語である。一方、日本語の比率は減少傾向にある。
言語のローカライズ化を図る(多言語対応をする)
海外でアプリをプロモーションする際、言語のローカライズ化は重要な要因の一つであるため、ローカライズ化を検討するとよいだろう。そのために海外のクラウドソーシングを利用する方法が考えられる。
クラウドソーシングを使う
ここでは翻訳にあたって有効的なクラウドソーシングを解説していく。
Upwork
世界最大規模のアメリカ大手のクラウドソーシング。世界中の企業とフリーランサーが参加しており、毎年何百万件もの案件が登録されている。
Gengo
日本最大級の翻訳サイトで、プロによる翻訳を安く早く提供するのが売り。日本語から英語に翻訳をする場合、日常的なコンテンツであれば1文字につき5円、特定分野の知識が必要なコンテンツであれは1文字9円から引き受け可能。
Conyac
世界100か国の96,000人のバイリンガルが対応している翻訳クラウドソーシングサービス。導入実績は1,000社以上。
英語から多言語へ変換する
日本語から英語の翻訳は多いが、日本語から英語以外の多言語に翻訳しようとすると、日本独特の言い回しや造語によって正確な翻訳がされづらいことがある。そのため一度英語に翻訳したものを基に多言語に再翻訳すると良い。
海外でアプリをプロモーションするには
今回は海外でアプリをプロモーションする際に注意することを解説してきた。国ごとの違い、言語ごとの違いを認識し、それに対応するカタチでプロモーションを行うと良いだろう。ぜひ参考にしていただきたい。
おすすめ記事
日本と海外マーケティングの違いとは?ビジネス機会を得る上で知りたいこと
海外SNS運用をする際に知っておくべき海外企業のSNSマーケティング事例
海外プロモーション