アジアの中心地としてハブのなりつつあるタイ。日本人にとっても働きやすく、ビジネスを成功させやすいとして日系企業の数多くが進出しています。特に製造・物流業界の進出が多く、タイに対して積極的に投資している過去もあります。
今回はタイに進出する際にどのようなメリットがあるのか、また進出するにあたって注意する点などについてお伝えしたいと思います。
タイの状況について
タイはアジアの中でも中心的な存在になりつつあり、世界各国の企業が進出しています。なかでも日系企業の進出が多く、タイに住む日本人の数は7万5,647人(2018年10月、在留邦人数調査統計)と、米国や中国、オーストラリアに次いで日本人の多い国です。多くの日本人が住んでいるためバンコクの街中では、日本食のレストランや日本語メニュー、日系の小売店を見かけることも多いでしょう。
日系企業にとって魅力的なタイの全体の人口は6786.9万人(2019年)と、日本人口の約半分ほどで、信仰している宗教は仏教です。年上を敬うなど日本と似た文化を持つタイは日本人にとってもすぐに親しみやすい国だといえます。
日系企業のタイ進出の状況
日系企業のタイへの進出動向について
JETROが公表している『タイ日系企業進出動向調査2017年』によると、2017年5月時点で約5,444社の日系企業がタイに拠点を構えています。
また同調査によると、近年の主な変化としては以下が挙げられます。
・非製造業(農業、建設業等を除く)の進出数が製造業を上回る。
製造業の 199 社の増加に対し、非製造業は 629 社の増加(前回調査比)
・中小企業の進出数が大企業を上回る
大企業の進出数は 404 社の増加に対し、中小企業は 432 社の増加
(前回調査比)
数年前から製造業よりも非製造業の進出数が上回ったり、中小企業の海外進出数の増加は、製造業中心の海外進出から考えると大きな変化ではないでしょうか。
(タイでは2020年3月からコロナが本格的に流行し、多くの日系企業が事業方針の転換に迫られているため、今後公表される調査の数字が変動する可能性があります。)
「開発拠点から消費市場へ」変わり続けるタイの市場
先ほどの日系企業による海外進出の変化にもあったように、タイの経済発展につれて、タイで展開する事業内容も変わってきています。
かつては安価な労働力を確保できるという理由で製造業中心に進出していましたが、タイの経済が発展するにつれて国民の所得が増え、消費市場として捉える企業が増えてきました。
一方で人件費が向上しているという事実もあり、日本と比べて安価な労働コストで生産できていた時代から変わりつつあります。
日系企業がタイに進出するメリットとは
1.アジアの「ハブ」に変わりつつあるタイ
タイは立地に恵まれておりアジアの中心に位置しているため、他のアジアの隣国へも数時間以内でアクセスできるのが特徴です。タイだけでなくアジア周辺国、世界各国への進出を計画している企業にとって好条件の一つになります。
またタイでは南部経済回廊(Southern Economic Corridor : SEC)が注目を集めており、鉄道計画などのインフラを整備することで、タイを中心に東南アジアの物流環境の改善に取り組んでいます。
2.日本人にとって住みやすい環境
タイは他の国には類を見ないほどに日本人が多く滞在している国です。まず日本人が住みやすい環境であり、私生活に支障なく仕事に集中できる点は、進出する際の一つのメリットといえます。日本食レストランも多く、海外にありがちな「食生活の問題」に困ることはほとんどないでしょう。
また進出企業数も多いことから、過去にタイ進出に成功している企業から成功事例として学ぶこともできます。日本人コミュニティを形成しやすく、現地で経験を積まれている人からのアドバイスや、ネットでは得られないような有益な情報にもアクセスできます。
実際にタイ現地では日本人によるセミナーやイベントなども多く開催されているので、タイに訪れた際はそのようなイベントに参加することをお勧めします。
3.経済成長により消費地として期待が高まっている。
アジア全体的に中間所得者層は増加傾向にあり、調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、タイでは2020年までに8割以上の世帯が中間所得者以上になり、富裕層は10%を超えると予測されています。
これらの中間所得者層および、富裕層の増加に伴い、消費活動がより促進されると予想され、これまでの生産する国から消費する国へと考え方がシフトしています。
バンコクに行ったことがある方はよく見かけたと思いますが、日系の飲食店やコンビニ、小売店などが多く進出しており、タイに新たな商機を見据えて進出する企業が増えています。
4.情報インフラが整備されており、ビジネスをしやすい。
タイ政府はブロードバンドの人口普及率を引き上げるため「National Broadband Policy」という策定を閣議決定しました。また政府は携帯電話普及も促進したことで、2016年時点でのタイの携帯電話契約数は1億1800万件で、人口普及率は 175.5%になります。
またスマートフォン普及率は全国平均で50.5%、都市部では60%、バンコクに限っては70.3%と高い普及率です。(タイコンテンツ市場調査(2017 年度版))
タイではICT環境が整っており、ビジネスを展開しやすい環境が整っています。
5. テクノロジーの進歩により現地支店を持たずとも、サービスのプロモーションが可能。
アプリやウェブサービスを持っている企業の場合、サービスのローカライズを徹底することで、現地法人を持たなかったとしてもweb広告でプロモーションできるという点が一つの特徴といえます。
先ほどスマートフォンの普及率について触れましたが、現地のニーズや受け入れられるサービスを理解し作ることができれば、日本に滞在しながらでもオンライン上で現地顧客にアプローチすることができます。
例えばタイの主流のソーシャルメディアはfacebookですが、facebookの広告プラットフォームを通してローカルの顧客に効率的にアプローチし、もしその運営体制で軌道に乗れば、現地進出する際にかかるコストを削減することができます。
日系企業がタイでビジネスをする際の注意点
少子高齢化が進むタイの人口動向
先ほど、中間所得者層が増えていることについて述べましたが、実はタイでも日本同様に少子高齢化、および人口減少が進んでいます。東南アジアと聞くと、これから人口が増加していくことがイメージされがちですが、実はタイでは、アジア主要新興国のなかでも早いペースで高齢化が進んでおり、65歳以上人口比率は現状の約1割から2030年代に2割を上回ると見込まれています。
そのため日本と同様に、近い将来において労働力や消費マーケットの縮小に関する課題に直面するであろうと予測されています。
人件費は上昇傾向にあり
タイ労働省によると、全国で2020年1月1日から日額の最低賃金の引き上げる方針を打ち出しました。最低賃金がもっとも高くなるのは、チョンブリー県とプーケット県(336バーツ)で、ラヨーン県(335バーツ)やバンコク都(331バーツ)と続きます。2001年の頃の最低賃金が133〜165バーツであったのに比べるとこの20年間で約2倍に最低賃金が上昇していることがわかります。(タイ国 最低賃金推移表(1989年~2020年))
これまでは製造業を中心に製造拠点としてタイに進出しており、人材に関する費用は「コスト」として捉えられており、従業員の育成など注力する企業もそこまで多くありませんでした。人材育成の観点でも日本人中心に注力されてきましたが、現在では状況が変化し、タイ人スタッフの育成・教育、マネジメントやローカルスタッフへの権限委譲が課題となっています。
「タイは親日国家である」を過信しない
タイでは、ローカルの方でも日本食や日本文化が好きであったり、日本の情景が好きで何度も日本に足を運ぶタイ人観光客や、日本語が堪能なタイ人の方も珍しくありません。
日本の文化はタイに広く浸透しており、これを「親日国家」とメディアなどは呼ぶかもしれません。一方でタイで日本食や文化が受け入れられていることと、日本の全ての製品が受け入れられることは必ずしもイコールではありません。そのため進出する際には事前に事業計画の作成や市場調査なども実施し、謙虚な姿勢を持ってローカル市場に参入することが求められます。
まとめ
これまで述べてきたようにタイは日本人にとってビジネスをしやすい環境といえます。一方で、タイ国民の嗜好性の変化や、テクノロジーの進歩による生活習慣への影響など、常にビジネス環境の変化に敏感になる必要があります。
現在ではテクノロジーの進歩により日本からでもwebマーケティングなどをできる時代になり、あらゆる手段を用いて自社サービスのプロモーションを海外で実施することができます。海外進出を考えられている方はタイへの進出を一度検討してみてはいかがでしょうか。
東南アジアに進出しようと考えている方はこちら↓ 東アジア諸国へ海外進出するメリット・デメリットを国別に徹底解説
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